紅海の入り口にはりだしたジブチ共和国はアフリカの角(つの)と呼ばれ、スエズ運河へ向かう大型船の集まる海運の要所となっています。狭い国土でこれといった資源も産業もないジブチは海のない隣国エチオピアの物流サービスの窓口となっています。港にはコンテナ埠頭がいくつもあり、エチオピアへ通じる道路は物資を乗せた大型トラックが行きかっています。その幹線道路脇をラクダが併走しているのはもともとの彼らの生息地に道路を通してしまったからかと思われます。業務は冬の2カ月でしたがそれでも世界で最も暑い(熱い?)国のひとつというだけあって毎日のように30度を軽く超える昼間の外での作業には気を使います。
市街中心部は開発が遅れているために昔ながらのフランス植民地時代の建物が残っています。多くは銀行、保険会社、ホテル等で1階がアーケードになっていて陽射しを避けて人がすずんでいます。仕事もなく昼からなにもすることがない現地人が多いのは他のアフリカ諸国と同じですが、違うのはかなりの欧米人の家族連れが普通に歩いていることです。それだけ治安が良いということですが、そのほとんどはアメリカ、フランス人で軍の関係者です。ここは知る人ぞ知る基地の街で当時は日本の自衛隊も300人ほど派遣されていたようで、街を歩いているとめずらしく「ニーハオ」ではなく「こんにちは」と挨拶をされます。ただし中国もここへ基地をつくるとのことなのでニーハオと呼ばれるのも時間の問題かもしれませんが。
その各国の軍が監視しているのがソマリアの海賊で小さな漁船で無防備な商船を取り囲んであっという間に乗っ取ってしまう様は実話を映画化したという「キャプテンフィリプス」で伺い知ることができます。トム・ハンクスよりむしろ本物を使っているのではと思える海賊のリーダーの演技が印象的でしたが、勉強するためにアメリカに行きたかったという彼の希望は皮肉にも拘束されることでかなってしまうのでした。
私の滞在した2016年には海賊による被害は各国の監視により激減し、すしざんまいの社長がソマリアの漁民からマグロを買い付け別の側面から海賊撲滅に一役買うという話が話題になっていました。