開発途上国に日本で役目を終えた消防車や救急車を整備し直して寄贈する「リサイクル援助」事業は2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大を受けて寄贈車両の準備について、また準備が整っても輸出船の確保ができないといった点で大きな影響を受けています。
特に海外研修は人の移動に対する規制強化に加えて、国内の新規陽性者数は下げ止まらず予断を許さない中で、自治体やメーカーから指導員の派遣に協力を仰ぐことは難しい状況が続いています。
そのような中、7月26日から29日までの3日間、日本と太平洋を隔てて地震や津波等の災害リスクを共有し、防災分野での協力を深めている南米チリ共和国から強い要請を受けていた起震車(地震体験車)を今年5月寄贈し、その使い方とメンテナンスに関する研修を実施しています。
これはチリ防災当局の国家緊急対策庁(ONEMI)に対して、2020年度外務省・在チリ日本大使館「草の根・人間の安全保障」無償資金協力の支援スキームにより幣協会が石川県金沢市から譲渡を受けた中古地震体験車を整備して寄贈するプロジェクトです。弊協会はレスキュー車を中心に2016年度にも埼玉県比企広域消防本部から譲渡を受けた地震体験車を同庁へ寄贈しており、チリの高い防災意識向上ニーズに応じてきました。
研修は弊協会の事業に協力していただいているメーカー飛鳥特装(株)(相模原市)を通じて松電通信(株)(横浜市)より寛大なご理解をいただき、ベテラン技術者の小池利幸さんが多忙を極める中でチリへお越し下さり、日本の技術が詰まった地震体験車の使い方をレクチャー、維持管理に関するノウハウを伝達しています。
日本はチリと今年、外交樹立125周年を迎えますが、今後もはしご車の寄贈と研修を実施する予定です。
日本の自治体から譲渡を受けた善意の寄贈品が、約1万7千キロ離れた地球の裏側にある南米チリで大変に感謝され、人々の防災教育に役立てられています。
(日本外交協会海外援助担当 森田 千博)